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【No.002】愛の無知

40年以上も昔のことなので相当に記憶が曖昧なことを、まず冒頭に記しておきたい。 65卒の先輩方が2年生だから我々66卒は1年生。部昇格前のまだ同好会のころだったと思う。

「取りあえずユニフォームを作ろう」ということになった。ラグビーのジャージが横シマだから、当然サッカーは縦ジマだろう、 ということで深く考えもせずにサンプルの中からえりの形とストライプの色と本数などを希望しただけで発注した(と思う)。 しばらくして出来上がってきた。ともかくも「ユニフォーム第一号」の誕生である。 (デザインなどはOB会ホームページの「フォトアルバム」を参照あれ)

MとLの2サイズだったせいか、ちょっときついとか、少し大きいとか、各人それぞれに不満もあったようだが、 何せそれまではTシャツか体育着かを流用して、テンデンバラバラに動き回っていたのだから、 ひとたび我がものにしてしまうと、少々の着心地の悪さや月並みなデザインなどは気にならない。 もうみんな有頂天。週3回の練習のたびにこのユニフォームを着て張り切っていた。

当時はまだ同好会組織だから、正式な試合はなかったはずだが、それでもいくつかの練習試合を経験した。

そのうちのひとつが上智大学◯◯サッカーサークルとの練習マッチ。技術的にはこちらも未熟だが、 あちらも同程度のチョボチョボ。それどころか、試合を申し込んでくる動機が不純だ。 「練習グランドがないので試合をしたい」「高校相手でも強いサッカー部はダメ。青山あたりの同好会ならいいだろう」 と考えたらしい。

いま思えば「なんと失礼なことだ」と反感も生まれようが、当時は「大学生と試合ができるぞ」と喜び勇んでいたものだ。

さて試合当日。

我々はいつものように1着しかないユニフォーム、毎日の練習で着て薄汚れた、あの縦ジマのユニフォームでアップをしていた。 いつもの慣れたグラウンドで気楽なもんだ。一方、相手を見ると各人がバラバラ。長袖やら半袖やら。 お花畑のように赤やら黄色やら。お?ジャージの奴もいるぞ。
「大学生なのに、まだユニフォームもないんだ」「俺たちは全員がユニフォームだぞ」 と密かにどっぷりと優越感に浸っていた。

さあ、そろそろゲームを始めますか。と言うことでお互いセンターラインに集合して形ばかりの挨拶の後「アオコー・ファイトー」の気合い。 一斉にポジションに散った。おお、なんと格好いいことよ。

と、相手を見ると何やらもぞもぞ全員が赤だの黄色だのシャツを脱ぎはじめた。 ややや!?その下には、なんと「新品」と見まごうほどに鮮やかなユニフォームが隠れていでたではないか。 歌舞伎の引抜きよろしく見事な演出ぞ!褒めてつかわす。それにしても知らないということは恐ろしい。 「そうか練習用のユニフォームと、試合用のユニフォームは別なんだ」。何事も経験が大事。

* この時の試合で勝ったのか負けたのか、どんな内容だったのか。もちろん覚えていない。 ただただ、汚いTシャツを脱いだ下から鮮やかなユニフォームが出てきた、というその演出のすばらしさだけが意識の中に焼き付いている。 サッカーの実力とは全く関係のないところで、我々はサッカーを楽しんでいたようだ。

(2006年5月14日 記)

by 高橋増郎(1966年卒)

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